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【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】「令和の初日の出」

鰐淵 正機 
(和田精密歯研常務取締役)

 パソコンが誤作動するという〝2000年問題〟の噂を気にしてその年の元旦は底冷えのする事務所に出向き、独り点検した。何ごともなく作動する機器に安心するやら拍子抜けするやらで、苦笑いしたのは今となっては懐かしい思い出だ。あれから20年。今や第4次産業革命といわれ、AIやIOT、5Gの技術で歯科医療の未来も大きく変化する兆しが見られる。

 昨今のデジタル化は、歯科技工所においてもデータを残せるという有意性がある。個々に異なる歯科補綴物をつくるのに、3Dプリンターは造形物の再現性と正確性から、またとない技術といえる。人間の目を越えた領域で計測して確認できるなど手技の限界ともいえる「全く同じ物は二つとつくれない」という今までの常識を覆す点で技工製品の可能性を感じさせる。

 また、上下顎のデジタルデータは患者さんのその時点の咬み合わせの状態の記録にもなるので、年月が過ぎても当時の咬み合わせを再現できる可能性がある。今後、歯科健診で咬み合わせの記録も残せるようになれば、その重要性の認識はさらに高められる。

 とはいえ歯科技工士不足は現場に深刻な影を落とし、とどのつまりは納期の延長や技工料金の値上げの話に展開する。患者さんの立場で考えれば歯科治療も短時間で高品質が優先されるべきだが、結局は患者さんのニーズが分からないと先を読み違えることになる。

デジタル化は技術や品質の競い合いでもあるのだが、本来は製品提供までの時間にフル活用するということなのかもしれない。自分たちが果たす職責の社会的貢献を考えるならば、価値あるものをより早くということになる。そこに適正価格を設定することに理解を得られるのではないだろうか。歯科技工業の新たな日の出となることに期待したい。
(W/W)

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