このパートを多くの先生方は知りたいと思います。もちろんここが肝(きも)であり、私も最も大切と考えています。
どんなに印象が良くても、またこの後、技工士さんがどれほど心血を注いで作っても、この咬合採得が適切でなければ、絶対と言ってよいほどうまくはいかないものです。
したがって、ここに細心の注意を払っておこなうこと、時間をかけて丁寧にすることが肝要です。
ただ、プロローグに書いた様に、私はゴシックアーチ・チェックバイト等の検査をしない咬合採得をしています。正しい位置決めをするための手段とするには、かなりの技量を要し、なかなか活かせないと思うからです。
さて、それでは実際の手法について、順を追って示していきましょう。
まず通法に従って咬合床を作ります。咬合採得中心の章ですので、詳細には書きませんが、この時点で長過ぎるかどうかを咬合床を口腔内に戻した時に判断します。多くは過長でないかのチェックです。
詳細は印象のパートに書くことにして、ワックス・リムについて書きはじめます。
リムは上顎のみ製作します。前歯部においてはインサイザル・パピラー(切歯乳頭)中点より前方8㎜を上限としてアーチを決めます。男性の場合は方形を良しとします。女性の場合は、尖頭形として犬歯尖頭間距離を長くしないことが審美的に良いと考えます。
リムの高さは、前歯部においては正中より遠心5㎜(A)を測定点として身長170㎝以上の背の高い方は22㎜、160㎝台の方は20㎜、150㎝台は18㎜としてリムを製作して審美性等を考慮し、高さを変えます。
![(A)正中より遠心5mm床縁を測定点として、 上顎前歯部の高径を決める。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-1_a.jpg)
臼歯部のリムの高さについては、ハミュラーノッチより5㎜と背の高さに関係なく設定しています。またハミュラーノッチより近心へ15㎜(B)はリムを設定しません。
これは多くの本には書かれていないことですが、このことを守ることによってエラーをかなり回避することが出来ます。多くのケースでスキーゾーンに力が加わらなくなります。
![(B)ハミュラーノッチより近心へ15mm位リムを設定しない。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-2_b.jpg)
一方、下顎はスキーゾーンにはワックスを乗せない様にスキーゾーンの前方位をマーク(C)しておくと、ワックスを乗せる後方限界(D)が明確になります。
![(C)スキーゾーンの前方位をマークすると、 ワックスを乗せる後方限界が明確になる。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-3_c.jpg)
![(D)スキーゾーンの前方に軟化された パラフィンワックスを乗せる。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-4_d.jpg)
いわゆる軟化パラフィンワックス臼歯部咬合法と同じ様な手法で咬合採得します。3枚厚さのワックスを2つ作り、6枚位の厚さで一度低いところまで咬合させ、センターを求め、左右のバランスを合わせます(E)。この手法、一見遠回りと思われるかも知れませんが、左右のバランスを合わせるという意味では有効と思いますし近道です。
![(E)咬合採得を行う。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-5_e.jpg)
これが私の咬合採得のポイントです。上下咬合床の関係を安定させ、同じ厚みのワックスを乗せ咬合してもらい、適切な高さとするにはこの手法が良いと考えます。
下顎の高さは170㎝以上の方は16㎜、160㎝台の方は14.5㎜、150㎝台の方は13.1㎜を目安に高さを設定します(F)(G)。
![(F)身長150cm台の方なので、上顎18mm、 下顎13.1mmニュースペースディバイダーで 高さを決定する。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-6_f.jpg)
![(G)ニュースペースディバイダーで高さの適否を確認する。本ケースは150cm台なので良いと判断。](https://labowada.co.jp/wp-content/uploads/2023/02/2-7_g.jpg)
繰り返しますが、この手法のポイントは、一度低いところまで噛ませ、上下の咬合床のバランス関係を合わせます。そして、その後同じ厚みのワックスを乗せ採得します。少し遠回りのようですが、結局近道と思います。
この手法が、咬合採得をする上で正しい位置を求めるための簡単で確実な手法と私は考えます。