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日本歯科新聞
掲載日
2024/06/04

【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】「補綴技工の相性」

人間関係ならば性格が正反対でも相性の良い人がいる。では、補綴技工の場合はどうだろうか。

今から20年近く前、わが社はインプラント上部構造の補綴を積極的に取り入れ、数多くの症例を手掛けていたが、担当部署は随分と苦労していた。フルマウスの症例ともなれば完成した技工製品は本当に素晴らしく、手に取って眺めては悦に入ったものだ。しかしそこは、高い技術がなければたどり着くことができない領域でもあった。

歯科技工は印象材から石膏、ワックスや埋没材、金属レジン陶材と各工程において膨張収縮、歪みを繰り返す。いわばプラスマイナスの繰り返しをいかに埋め合わせるか、いかに歪みを抑えるか。それこそが〝技術〟と、当時は自負していた。

前ロー付けを何度も行うフレームの適合精度。ロー付けは技工士の技量が顕著に現れる作業だ。骨結合した支台にアナログ技工で挑むのだから、技工室で夜明けを迎えることも幾度となくあった。さらにポーセレンのクラック対策は…?と、こう書くだけでも当時の苦労を思い出す方は多いはずだ。しかも、結局は破折して失敗ということも往々にしてある。

こう考えればインプラントとメタルボンドは相性が悪いのだろう。今風にいえば「ありよりのなし」。しかしながら、当時の担当者たちが技術の研鑽を積み重ねた技工魂に敬意を表したい。

時代は移り、これからはIOSとデジタル技工の時代になる。歯科技工は、より精度が高い器材と材料を用い、常に進歩していくだろう。しかし、新しいテクノロジーにもスキルとノウハウは必要だ。そこには過去に得た教訓も活かされる。デジタルとはいえ、扱うのは人なのだから相性があるに違いない。相性はクリニックとラボの関係にも言えるだろう。常に良い関係でありたい。

(W/W)

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