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【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】『「痛い」を解決』

鰐淵 正機 
(和田精密歯研常務取締役)

 「能力」だけでなく「脳力」という言葉も昨今よく耳にする。健康イベントでは簡単に自分の脳年齢や姿勢分析をして身体の歪みを知ることができるほか、血管年齢や体内糖化度、ストレス度などのセルフチェックもできる。通販会社のCMも健康と美容に関するものが多い。人生100年時代といわれ、世の中の意識は健康長寿に向かっている。おそらく予防や健康機器を扱う会社は今後も増えていくだろう。

 昨年11月にiPS細胞を使ったパーキンソン病の治験が始まったというニュースがあった。私の仲人を務めてくださった寺の住職が患っていた病気だったこともあり、老師の顔を思い出す度にこのニュースがあと20年早ければと心が痛む。
痛みには患者本人にしか分からない身体的なものと精神的なものがある。それは歯科でも同様だろう。精度や形態、色調と同じように「痛い」を解決するのは歯科技工でも取り組む価値があるところだ。

 例えば、新しい医療の概念として人体のネットワークで臓器同士が互いに情報のやり取りしているという話と同じように歯も全身とつながっていて、この部位の歯は身体のどの部分に影響するかといったことが証明されると、歯をつくる仕事と健康をつくる仕事の結びつきがより強くなって一般の方々の注目も高まるのではないか。

 今どきの技工学校の学生さんの歯牙のカービングは超絶技巧ともいえるレベルの高さで、その目は輝いている。歯科技工士の仕事が義歯やクラウンを製作することだけにとどまらず、「痛い」「つらい」を解決する役割を担い、全身との関わりに直結してくれば、それを目指す若者も増えるように思う。
 夢物語とお叱りを受けるかもしれないが、歯科技工士だからこそ「笑顔の向こうに」ある口福を目指していけるのではなかろうか。
(W/W)

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