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【日本歯科新聞】 さじかげん【番外編】「作り手使い手患者の声」

鰐淵 正機
(和田精密歯研常務取締役)

 ものづくり企業の見学で製畳工場に行った時に、工場長から畳職人の技術を再現するコンピュータ制御の製畳機を開発製造した話を聞いた。1日120枚の畳が製造可能となり、それは人の手の20倍になるという。

 この生産性には驚いたが、同時に意外な話もあった。畳はどんなに注文通りの寸法に製造しても、実際にその家の部屋にぴったり合うかどうかは現場に行かないと分からないというのだ。ピッタリと新品の畳を収める。これこそが畳職人の神髄なのか。

 これと同じ話を、商業向けのオーダーメイド家具を手掛ける工房の社長からも聞いたことがある。建築会社から受け取る設計図の寸法に合わせた家具をつくるのだが、現場では予期せぬ事態が起こるそうで、搬入と設置の前日の晩は緊張で眠れないという。建築現場は限られた工期の間だけ顔を合わせて担当する分野の作業を行う集合体のため、つくり直しが許されないというのだ。

 昔、ある先生から「補綴技工は誤差の集合体だ」という話を聞いた。確かに技工作業は工程ごとに材料の膨張と収縮が繰り返され、そのたび歪や誤差が生じ、最終的に調整して完成物に仕上げるわけだが、ちゃんと口腔内にセットできるかどうかが最も大事で、作るだけに集中してはいけない。チェアサイドに立ち会う時の最初の口腔内試適は緊張して仕方がないものだ。

 数々の立会いでセットの際の歯科医師の技術の高さをまざまざと見ることがある。これはまずいかもと思っても調整後にピッタリとする。まさに技だ。うまく収まると先生やスタッフさんと顔を見合わせて思わずにっこりする。

 しかし、本当の喜びの声を聞くのはその後だ。ユーザーである患者さんの言葉は、時に厳しいこともあるが、褒められると自信が付き、感謝されると責任感が湧く。歯科技工はそうした仕事の一つだ。

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