鰐淵 正機
(和田精密歯研監査役)
北海道の広大な農場でたった1台、土煙をあげて作業する大型トラクターの姿は見惚れるものがある。今農業はスマート農業といわれ、GPS、ICTの技術で無人トラクターやドローンをつかい、多種多様なデータをAIが分析管理して生産する研究開発が加速している。農業従事者の減少と高齢化、さらには後継者不足が進む中、農作業自体に膨大な手間がかかるという現実的課題は歯科技工業界とも共通するものがある。
大型トラクターの価格は1千万円以上する上、作物の運搬車両に収穫用コンバイン、田植え機なども揃えるとなると、借入や減価償却といった財務面の苦労もあるのではないかと考えてしまう。
この現象は歯科クリニックにも投影される気がして、CTや最新デジタルシステムの導入はクリニックの経営面でかなりの負担にならないのかと心配にもなるが、余計なお世話だと言われればそれまでだ。
スマート化のデメリットの一つに初期投資が大きいことがある。あえてもう一つ課題を加えるならば、機器のコンパクト化だろう。
数年前に何かの記事を読んで残したメモに「10年後の医療界は情報産業、医学、工学の融合体となり、従来の閉鎖的な業態から情報や技術の共有が世界的規模で進む開かれた産業になる」とあった。文中の医療界を農業界に置き換えてみると冒頭のスマート農業の意味も理解できる。
同じ課題を持つ歯科技工も同様にデジタルテクノロジーのネットワークのさらなる進化と拡大により、アウトソーシングと内製の使い分けが可能となり、AIの設計には匠のエッセンスが必要とされる。このようなイメージが一つのカギとなるのではないか。
未来に向かう明確なビジョンがあれば若い人たちが集まってくる可能性がある。
(W/W)