鰐淵 正機
(和田精密歯研監査役)
雨の季節。十数年前になるが研修会に参加するため、宿泊先から駅に向かって歩いていた。しかし、折からの強雨で電車に駆け込んだ時にはすっかり濡れてしまっていた。慌ててスーツを拭いていると、乗り合わせた一人の紳士が「君、背中を拭こう」といって私の手からハンカチを取った。思いがけない親切に胸が熱くなる。素敵な経験はずっと記憶に残るものだ。
このところZ世代という言葉を耳にする機会が多い。おおむね25歳以下で「転職に対するハードルが非常に低い」、「仕事とプライベートのメリハリが大きい」、「効率的で負担の少ないことを好む」などの傾向があるらしい。
働く価値観は時代とともに変わり、社会にはまだコロナ禍の影響も残っている。企業の場合、社員の教育指導、健康管理、福利厚生は主に総務部が担当する。他にも求人採用、労務、法務、財務、経理。近年はこれに加えて、コンプラkイアンス、働き方改革、例えば男性の育休制度の整備など、その負担は多くなる一方である。そのおかげで社員は健全に業務に就くことができるのだが、多くの企業ではZ世代へのマネジメントに苦労していると聞く。
例えば、技術職にありがちな「見て覚えろ」は「理解するまで教えてから作業をさせる」や「自ら成功へ導けるようなコーチングを必要とする」、「ビジョンやミッションを一方的に押し付けるのではなく、参加型ワークショップにする」など、対策例をまとめた資料も流通している。
これは歯科技工所にも当てはまるヒントである。クリニックの立会いに若い世代を帯同し、よい評価がもらえるように導くことは先輩や上司のすべきことだろう。もし患者さんから感謝の言葉をいただけたとしたら……。そう。素敵な経験はずっと記憶に残る。
まずは現場の自分たちにもできることは多い。
(参考資料・月刊総務メルマガ)
(W/W)