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SUPER TECHNICIAN

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TECHNICIAN
スーパーテクニシャン(歯科技工士紹介)

愛甲 文音

愛甲 文音 Ayane Aikou

従来法に劣ることなくデジタル技術で具現化させる

歯科技工士を目指したきっかけ

 高校生のとき、周りが進路を決めていく中、私はなかなか決まらずやりたいことや目標を何も持たずに生活していました。そんな時、母の紹介で歯科技工士という職業を知りました。紹介されたのはいいものの、正直あまり興味は持てませんでした。しかし、とにかく進路を決めてしまいたかった私は「とりあえず国家資格だし、資格を持っていて損はないだろう」くらいの軽い気持ちで専門学校への進学を決めました。今思い返せばいい加減な考えだったと恥ずかしくなりますが、その当時は自分の将来なのになぜか他人事のようにしか考えられなかったのです。そんな軽い気持ちで入学したので、辞めたいと思うこともありました。

 大学に進んだ友人は昼から登校したり、サークル活動に励んでいる姿を見て自分の選択を後悔したこともあります。しかし、そんな私でもなんとか卒業し、歯科技工士になれたのは専門学校で知り合った友人がいたからです。その友人がいなければ私は中途半端に投げ出し、歯科技工士になれていなかったと思います。

入社当時の思い出

入社当時の思い出

 学生時代にCAD/CAMセンターを見学に訪れた際、まずはその職場環境に驚いたことを今でも覚えています。日当たりの良い明るい部屋に、ピカピカに磨かれたフローリング、何台も並んだパソコンやモニター、今まで見聞きしていた歯科技工所のイメージとは良い意味で大きく違っていました。そんなCAD/CAMセンターに配属が決まった時はかなり舞い上がっていたと思います。しかし、すぐに先端技術に携わることがどれだけ大変か身をもって知ることになりました。

 まず壁にぶつかったのは、圧倒的な経験、知識不足です。臨床経験はゼロな上、実習でもほとんど触ったことがないCADソフトの知識やパソコンの扱い方、聞いたことのないデジタル用語など、覚えることは山のようにありました。また、生産性を向上させることにも苦労しました。デジタル技工はかなり時間にシビアです。加工に要する時間を確保するには、いかにデザインスピードを速めるかが重要になってきます。しかしスピードばかりに目を向けると、品質が疎かになったり、指示の見落としにもつながります。
 
 私自身も生産性と品質の両立がなかなかできず、迫りくるリミット時間と膨大なケース数に追い込まれてしまい、無意識に泣くこともありましたが「職場では涙を見せるな」という父の教えから必死に周りにバレないようモニターに隠れて涙をこらえていました。

スーパーテクニシャンを目指したきっかけ

 もともと、スーパーテクニシャンに対しての強い思いは正直ありませんでした。憧れはありましたが自分には縁遠い話だと思っていましたし、自分が合格できるわけがないと思っていました。何度か受験を薦められましたが、何かしら理由を付けてはその場をうまく逃げてきました。受験して不合格という結果にショックを受けることが怖かったのです。

 そんな私がスーパーテクニシャンを目指すようになったのは、上司のある一言がきっかけです。その方は、まだクラウンひとつまともに作れなかった私に自分が持っている技術や知識すべてを教えようとしてくれました。その分かなり厳しくご指導いただき、時には逃げ出したくなることもありましたが、誰よりも私の成長を願い、私が何かを成し遂げると一緒に喜んでくれる人でした。

 その恩師が「もうお前をどこに出しても恥ずかしくない」と言葉をかけてくれました。その言葉の裏には、「この先は自分の力でやっていけ」という意味があるように感じました。そこでここまで育ててもらった感謝と、自分のこれからも続く歯科技工士人生のひとつの区切りとして、受験を決心しました。

歯科技工士になってよかったと思う瞬間、エピソードなど

 以前、前歯の形態にすごくこだわってらっしゃる方のケースを担当することがありました。長さ何ミリまで指示がありましたが、なんとなく顔貌と合わせたイメージがあったほうがわかりやすいと思い、デザインした歯を顔貌写真と合成させ、前もって確認していただいたところすごく喜んでいただいたと営業伝えで聞きました。その時に嬉しかったのはもちろんですが、それと同時に身が引き締まった感覚は忘れられません。

 それまではただ黙々と目の前にあるケースに入った模型だけを見て、自分が作ったものがこれから先「患者さんの一部となる」という技工士として当たり前のことを考えていなかったのだと気が付きました。歯科技工が単なる製造業ではないと実感することができた瞬間でした。

さらなる目標、夢

 CAD/CAM機器の発展や口腔内スキャナーの普及により、日々進化しているデジタル技工ですが、まだまだ従来法でしか作製できない製品がたくさんあります。そのような製品をデジタル技術で劣ることなく具現化させることが今の一番の目標です。

 あとは、女性のスーパーテクニシャンがもっと増えるといいなと思います。日々活躍している女性社員がたくさんいる中で、やはりスーパーテクニシャンの試験を受験するのは圧倒的に男性社員が多いです。理由はさまざまあると思いますが、性別問わず少しでも「スーパーテクニシャンを目指してみようかな」と思えるきっかけのひとつになれるよう、私自身もまだまだ努力が必要だと思っています。

休日の過ごし方

 平日は仕事を理由に家のことをおろそかにしがちなので、休日にまとめておこなっています。大体それで休日が潰れてしまうことが多いですが、思いつきで旅行に行くことが好きなので、お財布と相談しつつ連休を利用して前日に行先や宿を決めて出かけることがあります。

 あとは写真が上手に撮れるようになりたいと最近思い始めたので、旅先で上手く撮れるよう練習しています(笑)。熱しやすく冷めやすい性格なので、趣味と呼べるものがなかなか見つかりませんが、いつか写真が趣味だといえるようになりたいと思います。

休日の過ごし方
休日の過ごし方

後輩やこれから歯科技工士になる方々へメッセージ

 私も技工歴は長くないのでまだこの業界の酸いも甘いも知れていませんが、ここまで働いてきて歯科技工はまだまだ可能性にあふれた職業だと感じています。ここ数年でデジタル技術はすさまじい勢いで進歩し、数年前では想像もつかなかったような技術が生まれています。

 長年抱えていた労働条件の悪さや離職率の高さなど歯科技工士という職業に対する悪いイメージも、国を挙げて改善していこうと動き始めています。私自身も経験したことですが、インターネットにあふれている歯科技工士の情報を見て、将来が不安になってしまう方もいらっしゃると思います。そんな方もまずは一歩この業界に足を踏み入れてみてください。

「想像していたより悪くないな」と思えるかもしれません。そして、何か自分の武器になるものを探してください。それは何も技術だけではないと思います。コミュニケーションをとることがうまいとか、人前で話すのが得意だとか、とにかく仕事に関することで「これだけは誰にも負けない」という武器があれば、困難があったとしてもその武器は最後まで味方になってくれると思います。

PRODUCT 歯科技工物紹介

CAD/CAM WORK

CAD/CAM WORK

PROFILE プロフィール

愛甲 文音

CADCAMセンター

愛甲 文音(アイコウ アヤネ)

1994年
大阪府生まれ
2015年
京都歯科医療技術専門学校 卒業
2015年
和田精密歯研株式会社 入社
2022年
スーパーテクニシャンに認定

所属学会

  • デジタル歯科学会

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