SUPER
TECHNICIAN
スーパーテクニシャン(歯科技工士紹介)
加藤 徹 Toru Kato
歯科技工士を目指したきっかけ
高校で進路を決めるときに、とにかく就職したいと思い県外で就職先を探していました。そのときに担任の先生から「こんな会社があるけどどうだ?」と勧めていただき、何をしている会社なのかも全く知らないまま返事をして入社することになりました。元々歯科技工士という職業は知らなかったのですが、当社に入社してから技工学校に通い、歯科技工士を目指しました。
入社当時の思い出
初めは模型室に配属されました。元々おっちょこちょいだったので、持っていたケースを横に置いたら、端っこは机がなくて落としてしまうといったどうしようもない失敗が多かったです。そのたびに「辞めてまえ」とよく言われていました。
今は、定着率が高くなってきていますが、当時は人の出入りがとても激しく、毎月のように送別会があり驚いたのを覚えています。
スーパーテクニシャンを目指したきっかけ
当時はスーパーテクニシャン制度がなく、私は一期生として任命されました。
スーパーテクニシャンになったとき、認められたという嬉しさもありましたが、その反面、プレッシャーもありました。聞かれたことにはきちんと答えないといけませんし、周りに対しての指導にも力をいれないといけません。それなりのことがきちんと言える自分であり続けないといけないので、常に勉強しておかないといけませんでした。当初は「今さらわからないことをわからないと言えない」という状態でしたが、ある程度経つと「知らない」「わからない」と言えるようになります。部下や後輩の作業の様子を見ていて、良いと思ったことは取り入れるようにしていました。
その先生の声を初めて聞いたのはお叱りの電話でした。もう17年前の話ですが、それまで担当していた者が何度もご迷惑をおかけしていて「この状況を本社はどう考えているの」と先生からお叱りを受けました。代わって私が担当することとなり、幸い先生の満足がいくものを提供することができました。その先生とはそれからのお付き合いです。
常にワンランク上を目指す先生で、意識的にも技術的にもそこで磨きがかかりました。今はその先生のセミナーをお手伝いすることもあり、そこから新しい出会いが始まったりもしています。あのとき電話を受けたのは偶然でしたが、この出会いは私にとって大きな節目でしたね。
歯科技工士になってよかったと思う瞬間、エピソード
私は、学歴でいうと高卒になります。大学を出た人たちのような一つ上の教育は受けていませんし、一般教養に関しては確実に負けていると思っています。私は歯科技工士になったから今こうやって人に指導をしたり説明をすることがありますが、それは専門的なことをやってきたからできることであって、一般世間の大きな枠の中でいうと劣っていると思っています。しかし、一つの小さなことですが、技工という枠の中で一生懸命やってきたから肩を並べることができるのではないかと思います。そういう意味では、歯科技工士という専門的な職業に就けてよかったと感じます。
また、20年ほど前に一度、患者さんに喜んでもらった症例で忘れられないことがあります。その患者さんは九州の方で、噛み合わせと頭痛で悩み、知り合いの歯科医院を転々と渡り歩き、大阪のドクターのところまできたそうです。初診のときから立ち会わせていただき、何度かお話を聞きながら技工物を製作させていただきました。最後に「ありがとうございました」と言って手紙と定期入れをいただき、その手紙に今まで悩んでいたことや大阪のドクターのところまできた経緯などが書かれていました。今でもその手紙を持っています。歯科技工士をやっていて一生のうちでこんなに喜んでもらえることは、きっと後にも先にも一度だけかなと思います。あのときはとても嬉しかったですね。
さらなる目標、夢
当社は完全に分業制で仕事をしているので、各部署にその工程のプロが必要だと思います。ただ、その工程のプロになろうと思ったらその工程のことだけではなく、全ての作業工程を知らないといけません。今、教育をする立場として、各工程のプロや工程全体を把握する勉強ができる環境を作っていかなければならないと思っています。
休日の過ごし方
休みの日は家にいないことが多いです。
電車に乗って降りたことのない駅や行ったことのない街に行って一人でブラブラしています。
後輩やこれから歯科技工士を目指す方々へメッセージ
よく「教えてもらえない」と聞きますが、教えることは不可能だと思っています。私の手はあなたの手ではないし、私の目はあなたの目ではないので、私と同じやり方で言われたとおりにしても同じものは作れません。昔は、「見て覚えろ」とよくいわれたものですが、現在ではそれが通用しなくなってきています。指導する立場の人へは、若手に対して答えを導けるようなヒントを与える訓練をしてもらえればと思います。そういう意味でも、現在技工学校の学生に現場での“生”の技工を教えている技工ゼミを通して、指導のコツを学んでいってもらいたいですね。
そして、学ぶ側はそのヒントを受け取り、自分なりにアレンジして自分のものにすることが必要です。人それぞれ違うので、与えられた通りでは絶対に同じようにはできません。「人の与えてくれるものを人間は大事にしない。自分で苦労して掴み取ったものだけを人間は大事にする」という言葉を聞いたことがありますが、それは「見て覚えろ」という昔からの技術職としての精神です。その精神はまだまだ残っていると思うので、与えられたヒントから自分で吸収して自分なりのやり方を確立していってほしいと思います。
PRODUCT 歯科技工物紹介
PORCELAIN WORK
PROFILE プロフィール
大阪センター
加藤 徹(カトウ トオル)- 1960年
- 香川県出身
- 1982年
- 新大阪歯科技工士専門学校 卒業
- 1979年
- 和田精密歯研株式会社 入社
- 1997年
- スーパーテクニシャン 認定
資格
- 2006年
- 日本歯科審美学会 歯科技工認定士
- 2005年~
- 新大阪歯科技工士専門学校 非常勤講師
所属学会
- 日本補綴歯科学会
- 日本歯科色彩学会
主な論文発表
- 1998年 4月
- 『シェードテイクの難しさ』 社報 希望
- 2005年 4月
- 『臨床におけるシェードの分布』 社報 希望
- 2005年 6月
- 『支台歯トリミングの注意点』 社報 希望
- 2005年12月
- 『歯科におけるシェードの分布』 日本歯科色彩学会
- 2008年 4月
- 『インプラントを使用した上顎の審美改善』 社報 希望
- 2012年 6月
- 『色の難しさ』 社報 希望
- 2013年12月
- 『チェアーサイドとのコミュニケーションの重要性』 社報 希望
主な学会発表
- 2002年 3月
- 『支台歯形成がエレクトロフォーミングに及ぼす影響について』 日本補綴歯科学会関西支部総会」
- 2007年
- 『歯科のチタン鋳造』 第6回 国際歯科チタンシンポジウム
- 2009年
- 『テクニカルコンテスト 審査委員特別賞』 第4回 国際歯科技工学術大会
- 2013年
- 『テクニカルコンテスト 金賞』 第5回 国際歯科技工学術大会