SUPER
TECHNICIAN
スーパーテクニシャン(歯科技工士紹介)
妹尾 祐介 Yusuke Senoo
歯科技工士を目指したきっかけ
学生時代に読んだ本の中に、二十世紀初頭のイギリスで新聞に小さく掲載された、南極探検の隊員募集広告が紹介されていました。
そこには「求む男子。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には、名誉と賞賛を得る。アーネスト・シャンクルトン」とあり、この募集広告で5000人以上の募集があったといわれています。
この文案は私の心に強く突き刺さり、人があまり継続していない職業ほど、困難だけど成功すると価値があるのではないかと思い調べてみました。そして当時の歯科技工業界は低収入・長時間労働・劣悪な職場環境などから、担い手不足や離職者が増加傾向となっており、一方で技術のある歯科技工士は高収入を手にしていると知り、歯科技工士を目指しました。
入社当時の思い出
入社当時、ハードレジン完成工程の担当者で、作業中に支台歯を破折させてしまいました。おわびの連絡をしたところ、歯科医院様から患者さんのセット時に立会ってほしいと依頼を受けました。患者さんは70歳後半の女性で、セット当日杖をつきながら、足元がおぼつかない状態で来院しました。
セットはスムーズに終わり、患者さんから「本物の歯に見えます。これで孫と会うのが、更に楽しみになりました」とお言葉をいただきました。
セット前は自分が支台歯を破折したことで適合不良となり、足が悪い患者さんにもう一度来院していただかなければならないという申しわけない気持ちでいっぱいでしたが、歯科技工士になって、初めて患者さんから直接お褒めの言葉をいただき、人の役に立つ仕事だと実感して、嬉しかったのを今でも強く覚えています。
スーパーテクニシャンを目指したきっかけ
スーパーテクニシャン大坂氏の存在が、とても大きく影響を与えてくれました。入社して以来20年以上、大坂氏の近くで歯科技工をおこなってきましたが、歯科医師様・歯科衛生士様・歯科医院スタッフ様そして患者さんへの対応や配慮、歯科技工に対する情熱、歯科技工に対する飽くなき探求心、歯科技工に対する向上心、歯科技工に対する誠実な姿勢、営業部や他拠点への歯科技工に対する勉強会、歯科医院様・患者さんからの歯科技工に対する高度な要望への苦悩する姿など数えきれないさまざまな場面を見てきました。
日々、大変そうですが、誰かのために歯科技工に取り組んで充実されているように感じ、自分もいろいろな人に頼りにされる歯科技工士になるための第一歩として、スーパーテクニシャンを目指しました。
歯科技工士になってよかったと思う瞬間、エピソードなど
歯科技工士になって10年ぐらいのころ、まだまだ仕事に余裕がある状況ではありませんでしたが、少しだけ心にゆとりが生まれ、補綴装置のシェードテイキング・セットの立会い・クリニカルカンファレンスなどで歯科医院様を訪問する機会が増えてきていました。
そのときに歯科医師の先生方から失敗した内容だけでなく、ものごとの考え方、解決の仕方、さらには人としての在り方や礼節までも数年にわたり、時に父親のように厳しく熱い指導を時に母親のように温かく見守って教えていただき、現在でもそのことに大変助けられています。
「先生方のおかげで今の私がある」と思っています。このような恩師と呼べる先生方との出会いで自分が成長できたことが歯科技工士になって一番よかったと思う瞬間です。
さらなる目標、夢
十数年前、60代女性の患者さんで上顎両側中切歯のPFMケースを色見したときに、周りの歯牙に合わせてA2を勧めると患者さんから
「陶器で作られたトイレの便器のような真っ白な色にしてほしい」
と言われ、白浮きする恐れがあるので、A1かA2のほうが周りの歯牙と調和がとれますと説明していると、先生から「機能は製作する側が決定しても、審美は製作する側の思いだけを押し付けないように、患者さんの要望をしっかりきいて製作してください」といわれたことがあります。
美しくしてあげたいという思いが強ければ強いほど製作する側だけの範疇でものごとを判断してしまうので、審美に関してはできるだけ要望を汲み取り、患者さんに寄り添える歯科技工士になりたいです。
休日の過ごし方
コロナ禍前は国内外問わず旅行をよくしていました。最近は子供と一緒に公園の遊具で遊んだり、コンサートを鑑賞したり、動物園で動物を鑑賞したり、サーカスを鑑賞したり、水族館で海洋生物を鑑賞したり、イベントに参加したり、美術館で絵画を鑑賞したり、植物園で植物を鑑賞したり、外食をしたり、牧場で動物と戯れたり、海やプールで泳いだり、神社仏閣巡り参拝したり、買い物をしたり、映画鑑賞したり、遊園地で行楽したりして、100%子供中心の休日を過ごしています。
後輩やこれから歯科技工士になる方々へメッセージ
歯科治療は他の医療行為と比べると患者さんからの要望を汲み取っておこなう範囲が広いと感じています。特に”美”に関しては、美しくしてあげたい製作する側と美しくありたい患者さんとの基準や感じ方の相違などで、ずいぶんと評価が変わってきます。
これからの歯科技工士にはコミュニケーション能力が求められ、特に「話す力」「聞く力」「交渉する力」の3種類が大切です。
「話す力」とは、自分の意見をしっかり主張できること。「聞く力」とは、自分の話ばかりではなく、相手の話にも耳を傾けられること。「交渉する力」とは、自分の意見を主張し、相手の心情を読み取ったうえで、相手を説得し、自分の側に引き込むことなどを歯科技工と両立して取得すれば、患者さんからの評価が高くなると個人的に思っています。
PRODUCT 歯科技工物紹介
PORCELAIN WORK
PROFILE プロフィール
岡山ラボ
妹尾 祐介(セノオ ユウスケ)- 1979年
- 岡山県生まれ
- 2000年
- 笠岡歯科技工専門学校 卒業
- 2000年
- 和田精密歯研株式会社 入社
- 2022年
- スーパーテクニシャンに認定
所属学会
- 日本歯科技工学会
象牙質歯髄治療学会