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日本歯科新聞
掲載日
2024/04/02

【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】「熟練の視点」

新年度のスタートとともに新たな仲間を迎えた職場も多いことだろう。若い歯科技工士の方々が、この先も長く活躍されることを心から祈る。

昔、歯科技工士の離職率が話題になった時期があったが、歯科技工自体は意義のある大変よい仕事である。整えるのは労務環境だ。昨今は、年間休日数が就職先を決める際の優先項目であるらしい。歯科技工士不足の今、どの技工所でも丁寧な指導育成がなされていることだろう。歯科技工に限らず、技術職の能力は経験値がある程度を占めるが、いわゆる〝熟練者〟はどのような視点を持っているのだろうか。

先日、自社で作製したジルコニアインレーを持って意気揚々とチェアサイドに立ち会った。問題なくセットされることを期待していたが、口腔内で試適をした時に0・5㍉も浮き上がり、全く入らなかった。その場で駄目だと判断し再製を申し出た。すると先生が「大丈夫。入りますよ」と一言。わずかに内面を削って調整をされた。再び試適すると、先ほどとは違いぴったりと収まったから驚いた。「御社に限らず他社製作でも、その多くが調整箇所は同じだ」と先生。デジタル加工の製品でもそうなのかと学びを得た。これこそ熟練者の視点だと考えていたところ、熟練歯科技工士の視点はどこだと逆に質問を受けたので「基本」と答えた。

以下は私見になるが、例えば咬合器装着の正確性。そして上下の歯列弓形態、咬合湾曲。歯の大きさや咬頭の形態。作製する歯の咬頭が対合のどの小窩に入るのか。人工歯配列も同様だ。言い換えれば技工学校で最初に習うことかもしれない。

歯科技工士人生をスタートした若いみなさんは、今が大切。学んできた全てに意味があることをこれから経験する。青年たちの素晴らしい歯科技工の旅が続くことを願う。

(W/W)

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