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【日本歯科新聞】さじかげん(151)「熟練をどう伝えるか」

 長年やってきた歯型彫刻の世界で培った経験を生かしてみたくて、石大工の自画石像に挑戦してみた。

 同一色の巨大な石の塊をどういう手順で割っていくのか、全く見当がつかない。一工程ずつのやり方とその成果は初めての体験で計り知れないが、師匠は工程ごとに「こうしてやってください」としか言わない。

 われながら無謀な作業に着手したものだと苦しむ。その上、石を削る道具はチッパーと称する工具とダイヤモンドグラインダーだけである。これだけであんなに繊細な目や鼻や口が彫れるのか悩みと不安を感じながら削ってゆく。一つ間違えれば今までの作業は元の木阿弥、失った部分を足して肉盛りすることは不可能であり、石大工の熟練の技能を要するゆえんである。

 歯科の技術においては支台歯形成がこの石像彫刻と似ている。ミスは許されず、ちょっと削り過ぎると再び肉盛りしにくい。しかし、歯科技工では、歯冠回復の原型はワックスパターンであり、逆に盛り上げて造形していくので、つい油断しがちで、やり直すことも常識となる甘さがある。歯科技工の世界において、この一発勝負の厳しい世界をどう教えるか、それが成功または不成功の鍵になる。

 石大工の世界は、見よう見まねで覚える昔の師匠と弟子の世界が今でも継承されている。業種を変えて彫刻造形に励む私の弟子としての心理は、目標と過程が見えない苦しさがある。

 歯科技工士の教育方法も、一昔前までは石大工と同様であったが、時代は変わり、技工士の担い手も減少している中でどのように熟練技術を伝承していくかを考えなければならない。

 新年度、新人を迎えるにあたり、教える側である我々がいかに弟子のこの苦しさを軽減し、かつ技術の厳しさを教えていくかを工夫・改革しなければ、後進は育たない。

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