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【日本歯科新聞】さじかげん(153)「画家の美術館」

 広大な農地の真ん中にある美術館にその人はいる。画家の村元美海氏を訪ねたのは、十勝平野が春の準備にあわただしい4月の中旬だった。快晴とはいえ気温はまだ低く、時折、突風が土ほこりを舞い上げた。美術館は、廃校になった木造小学校を利用したもので、長年その土地になじんできた風景にどこか懐かしさを覚える。第一、運動会ができるほど大きなグラウンドを所有している美術館とは愉快ではないか。

 絵の具の溶き油がつんと香るアトリエで、制作中のキャンバスを手にする。ずっしりとした重量感は作品の持つ風格とも受け取れるが、キャンバスの重さは失敗の数、失敗を隠す数でしかないと村元氏は言う。

 展示されている絵は、四季移ろう十勝の大自然やそこに暮らす人々、ばら、ひまわりなどの美しい花々が色鮮やかに描かれている。絵からは作者が大自然に真正面に向き合う迫力を感じ取ることができる。絵の具をのせる時は、空気のにおい日光の温かさを描きこむとも言った。それらが一体となったものを何と表現するか。まさしく気のようなものが画格となって伝わってくるのだろう。見る者に伝わるものが有るかないかが、絵画と絵の違いなのだと教えてくれた。

 どんな仕事をするにもまず自分というものがなければ相手を知ることはできない。絵も技工物も役に立たなくなったら不快なもの。絵の見てくれは歯の噛みごたえと一緒。うまい言い回しである。失礼は承知だが、村元氏の作品を一言で語るとすれば「生きる喜び」だ。自分の哲学を持ち黙々と自己研鑚に努めていけば、会えるべく人には会えて、成すべき仕事は成せるのである。

 世の人々に大きな影響を与えるすごい仕事を創造する人が、会ってみればユーモアたっぷりの普通の人間であるというのが面白い。人生とは何とも愉快ではないか。(W/W)

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