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【日本歯科新聞】さじかげん (160)「研究される歯」

 知人が送ってくれた本「人類進化の700万年」(三井誠著、講談社現代新書)を年末年始に楽しく読ませていただいた。科学文明が進んだ現代でも人類の起源は不明な点が多く、化石からみる考古学は歯牙から読み解く論説が多いのに興味を引かれた。

 一夫多妻のハーレムを持つゴリラは群れの統制のためにオスの体格がメスよりも大きく、群外のオスとも闘うため犬歯が大きい。また、多夫多妻のチンパンジーは、オスとメスの体格差はないが、群れの中での順位を争うためオスの犬歯はメスより大きい。

 そして人間は……。契りを結んだ相手と安定した暮らしを営んで子孫繁栄を行うようになり、犬歯を見せつけ合う必要がなくなった。実は世界849民族のうち83%が一夫多妻制を敷いているが、現実は経済力の問題でほとんどが一夫一妻だそうだ。

 本書で最も興味をそそられたのが、180万年前の頭骨化石だ。上顎の歯が全部なくなっているが、抜歯窩は歯槽骨で埋まっていたそうで、歯が全部抜け落ちてからも長く生きていたのを証明し、仲間の介護を受けていた証拠と考えられるというのだ。まだ火を使いこなしていない時代、さぞかし冬の寒さは厳しかっただろうが、仲間に食料を分け与える人とも猿ともつかない原人たちを想像すると心が温かくなった。

 北の都市の冬は道路が凍りついてもマンホールだけは地下を流れる生活下水に暖められて凍らない。われわれはどれだけのエネルギー資源を使い、どれだけの熱エネルギーを捨てているのだろう。現代の生活は効率が良いのか悪いのかさえ怪しい。

 権力を追い利権を求める世界や、自己の利益を追求する殺伐とした闘いの世界が続けば、今度は人間の犬歯が大きくなるやもしれない。これも適応なのだろうが、おおよそ180万年前の無歯顎の人類はそんなことは望まないだろう。(W/W)

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