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【日本歯科新聞】さじかげん(182)「人生はイーブン」

和田弘毅

 たまには哲学的なことを記したい。80歳を過ぎたころから、物事は幸も不幸も、表も裏も、常に「諸行無常だな」と思うようになった。人生の行程には必ず登り坂があれば下り坂があり、楽があれば苦がある。

 マスコミでよく報じられる出来事の道筋を見ていればすぐ分かることであるが、例えば政治家の日本を代表するような方々でさえ浮き沈みがあり、ある時トップ当選しても次の選挙で落選の憂き目にあうのも珍しくない。まさしく人生はイーブンと言える。そして幼少のころ、不遇な方ほど将来への成功の動機を作っているような気がする。

 『こころの匙加減』(飛鳥新社)を書いた髙橋幸枝氏は、「波風が立たないと、帆船は前に進まない」という言葉が大好きだという。この本は好評を博した人気書籍だそうだ。髙橋氏は101歳で、散歩はしないが毎日51段の階段を3~5往復する。健康のため、夕食時に高級な日本酒を150ccくらいを時間かけてゆっくり飲む。そして、甥である熱川のつくし館のK氏に「生日本ハチミツ」を所望し、食前、食後に飲まれるらしい。101歳にして現役の精神科の臨床医であり、病院理事長も務めているというから驚きだ。

 人生はイーブンの一例に、お金にまつわる話がある。

 お金がたまるか、たまらないかはお金を居心地良くしているか、していないかによって結果が変わる。死に金を使っていると増えないが、世のため人のために使っているとやがて自然に増えるという。お金にも喜怒哀楽があるのだろうか。

 私が最近好んで使っている言葉に「一読、十笑、百吸、千字、万歩」がある。医師の石川恭三氏の言葉だが、心身ともに健康で長生きするためには、知恵と工夫、そして忍耐が必要だと感じている。

 生きていればいろいろなことが起こるが、結局、最後にはつじつまが合うようになっているのが人生のようである。

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