鰐淵 正機
(和田精密歯研常務取締役)
平成30年は8020運動の30周年だそうだ。開始当初の8020達成率は約10%で平均残存歯数は8本だったらしい。それが平成28年に達成率は51・2%、平均残存歯数は15・5本となった。歯科医師会や歯科業界に携わる方々の努力の結果といえる。
そして、2017年6月9日に閣議決定され「経済財政運営の改革基本方針2017」では、「口腔の健康は全身の健康にもつながる」とされ、歯科保健医療の充実への取り組みが明記された。
さらに、健康と口腔の機能障害の関係を示すオーラルフレイルも世の中に浸透しつつあり、今後の歯科保健医療の需要は従来型の歯の形態回復から機能回復に変わっていくと考えられている。これらの点からみても、歯科技工士の果たす仕事の質にも変化が起こってくるのではないだろうか。言葉を額面通りに理解するならば、当然、噛める義歯が求められる。
そのためには歯科技工士が高齢者の施設を訪問して、実際の義歯の状態を診(見)させていただくことが重要となる。歯科医師と歯科技工士が同伴で出掛けていく診療スタイルを確立していただきたいと願っている。
先日、義歯を専門とする歯科技工所の代表を訪ねた。その方は、実の姉が介護施設を開所しているので、今後は歯科医師と歯科衛生士、そして介護士と協力して噛める義歯を提供したいという将来ビジョンを語ってくれた。
医科歯科連携や地域包括ケアといった言葉もよく耳にするが、義歯の製造には歯科技工士が大きく関係しているのに、そこには歯科技工士の名前が出てこない。介護の実情をよく知る介護士と歯科技工士とのかかわりは今後、必要になってくるだろう。
現場で行われるこのような努力によって歯科が本当の主役になるのではないか。また、そうなる日をつくり上げたい。
(W/W)