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【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】変化する作り方「口嚼ノ酒」

 鰐淵 正機
(和田精密歯研常務取締役)

 酒の起源は、米などの穀物やイモ類、木の実などを口に入れて噛み、吐き出してためたものを放置してつくる「口嚼ノ酒」らしいが、その字面は非常に興味深い。

 有名な日本酒の蔵元(酒造メーカー)の社長の話では、日本酒の製造法こそ古来の伝統というイメージだが、実はそうではない。平安時代や鎌倉時代に書き残された製造法で再現すると、まずくて臭くて、とても飲める代物ではなく、普段目にする清酒は江戸中期に製造法が確立されたそうだ。今は空前の日本酒ブームで海外でも評価が高い。容器の基準が一升瓶から4合瓶に変わりつつあるのはワインクーラーに収まるようにという世界戦略のようだ。

 特に誰から指示されたわけでもないのに近代に日本酒が高度な進化を遂げたのは、ひとえに杜氏の個人的な追求によるものだという。酒を仕込む職人が独自の工夫を重ねて品質改良してきた成果と言える。この独自の工夫と進歩は、歯科技工士にも重なるのではないか。

 歯科医療が歯の形態回復の治療から機能回復や歯科疾患の予防へと方向転換されている中で、歯科技工士が作る補綴物の基本は「咀嚼できる」という機能回復が目的となる。ここにデジタル技術が加わる意義は大きい。補綴治療に正確性が増し、手作業の歯科技工ではかなわなかった全く同じ形を作るという再現性が加わる。こうして歯科技工は進化していくのだろう。

 大河は太古から流れるが、今流れている水は昨日の水ではない。歯科技工も毎日が変化で日々進化する。日本酒には飲んで楽しむほかに物事を清めるというもう一つの意味があるように歯科医療も口腔機能の回復がオーラルフレイルを回避して健康長寿につながるとダブルの効果が謳われる時代となった。

 桜を愛でて盃を交わす時季。その始まりは口嚼ノ酒という……(W/W)

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