もともと私自身、医療系とは全く無縁で、高校も工業高校の出身であり、歯科技工士という職業も知りませんでした。幼いころから何かを模倣して絵を描くことや粘土やブロックなどで形を作り上げることが大好きで、高校卒業後、一度は店舗家具を製作する仕事に就きましたが、何か自分の中で物足りなさがあったことと、生涯にわたって使える資格でかつ自分の好きなものづくりに携われる仕事は無いかと悩んでいました。

　そんな時、母の知り合いの歯科技工士の方にお話を伺いました。その方は自分の家の隣で個人ラボを経営されており、こんな働きかたもできるのかと衝撃を受け、先々を考えたときにこれはすごいと思い、目指したのがきっかけです。

　入社後はＭＢやＨＲの完成工程の担当になりました。入社以来私を指導してくださった上司が気さくな方で、いろいろなお話しをしてくださったり食事をご馳走してくださったりと、入社間もなくて不安だった私を気遣っていただき本当に嬉しく、諸先輩方からもいろいろと良くしていただいて、少しでも何かできないか、早く力になりたいという思いが強かったです。

　失敗やミスに関しても本当にいろいろやらかしました。完成工程なだけにミスをすると取り返しがつかないことが多く、自分では製作できないのに完成間近のロングのＭＢを落として割ったり、研磨でメタルに穴を空けたりなど迷惑ばかりかけたのを思いだします。中でも小臼歯のセラミックインレーを完成日前日になくしてしまい、当時の名古屋ラボでは製作していなかったため、夜中まで先輩・上司の方にも探していただいたことなど上げればきりがありませんが、そういった経験が今の私の技工をおこなう中での注意深さの教訓にもなっています。

　入社してから20年近くたった今、これまで指導いただいた上司の方々に教わったこと、自分の中で培ってきたことを少しでも多くの後輩に伝えて、後任の育成に力を入れていきたいと思います。私はセラミックス製品に携わっていますが、近年進むデジタル化の中でここ数年大きく変わってきています。

　今後も新しいことを学んで挑戦していくのはもちろんですが、デジタルをうまく活用することによりアナログで培った経験を生かし、先生や患者さんに更なる価値を提供できることを目指して、満足のいただける補綴物を心掛けていきます。

　歯科技工士という職業は、とても社会貢献度の高い仕事だと思います。歯は老若男女問わず誰にでも関係してくることですし、その人の生活に大きく影響してきます。また技術職なので当然技術というものは常に求められ、それに裏付いた知識も必要です。すぐに結果を出せる仕事ではないですが、日々の積み重ねでいろいろ悩みながら考えに考えて身に着けたことは裏切りません。壁に当たったときはいろんな可能性を考え行動してみることが大切だと思います。
　
　当社は多くの仲間や先輩方がみえ、技工はもちろん技工以外でも成長できる環境はとても整っています。ぜひ先を見据えた目標を持って上を目指してください。