SUPER
TECHNICIAN
スーパーテクニシャン(歯科技工士紹介)
山木 康充 Yamaki Yasumitsu
歯科技工士との出会い
私が最初に歯科技工という職業に出会ったのは、浪人時代でした。大学受験を目指していましたが、あまり現実味がなく勉強にも身が入っていませんでした。そんな中、何か医療系の仕事を探そうと思い専門学校のパンフレットをめくっていたときでした。「歯科技工士」のページに目がとまりました。子どものころ、時計を分解したり、木工で何か作ったりと「ものづくり」に対し興味が強かった私は、自然と「技工」という響きに惹かれ、歯科技工士学校の体験入学に行くことにしました。体験入学では、石膏棒から円錐や円を掘り出す私の手つきと作品を見た先生から「正確に掘り出すのはなかなか難しいんだよ。君は掘り方も丁寧だし技工士に向いている」と言われて決心しました。
実際に歯科技工の仕事に就いて、自分自身の手でものを作り出す仕事はある意味仕事の原点なのだと改めて感じました。自分が作ったものが誰かの体の一部になって、生活の役に立っていることは大きな喜びを感じます。やはりそれが「ものづくり」を仕事にすることの醍醐味だと感じます。
「速い」ではなく「考える」
入社当時は思うように手が動かず、思いの外仕事をこなすことができない日々を過ごしました。そのわりに、口だけ達者で生意気で面倒くさい新入社員でした(笑)。そのため、スピードよりも丁寧さが要求される大学病院関係の仕事を担当していました。ときどき、休憩時間に会った同期に「今日40本渡されたよ。山木は?」と聞かれ、言葉につまりました。まさか「6本」とは言えませんでした。今考えるとコンプレックスに苛まれていて一番辛い時期でもありました。
正直、今でも数をこなすことはなかなかできないのです。ただ、10年ほど前から、インプラントフレームやアバットメントの設計やパーツの選択など、「考える」部分が大きいインプラントの症例が増えてきました。もともと「考える」ことや人に説明することは得意だったので、先生と設計を相談したり、必要なパーツを考えたり、「考える」技工が多くなってから、歯科技工士としての自分に自信を持てたように思います。
技工の花形と言えば完成工程。インプラントのアバットメントの設計やメタルの適合が素晴らしいと褒められることはほとんどありません。ただ、さまざまなリスクを考慮した上で緻密に設計された土台がなければ、その上にどんなに素晴らしいセラミックスの歯を作ったとしても崩れてしまいます。決して目立つことはありませんが、素晴らしい技工物を支えるための仕事は私にとってとても重大な役目だと思っています。
また、私の場合、技術的には他のスーパーテクニシャンと比べると秀でているわけではないのです。しかし、「考える」技工のおかげでコンプレックスを克服することができました。それは今後のCAD/CAMの活用でも期待していることで、自分の手では上手く再現できないこともPCで実現することができたり、技術的なコンプレックスを埋めるツールの1つにもなりえます。まさに「考える」技工を可能にするツールだと思っています。
デジタルがもたらす新しい働き方
もう一つ、私がデジタル技工に期待していることは「勤務形態の多様化」です。私が所属しているインプラント技工センターは女性の割合が比較的多く、出産休暇や育児休暇で長期間休むため、どうしても一度技工から離れなければなりません。技術を商売にしている以上、数ヶ月でもブランクがあいてしまうと職場に戻ってきて感覚を取り戻すのは容易ではありません。実際にそれで苦しむ社員の姿を何度も見てきましたし、少しでも技工に関わり続けることができればと考えていました。
デジタル化が進めば、自宅で設計をおこなう在宅勤務も可能になります。そうなれば、女性の結婚・出産などの節目にも仕事を休んだり辞めたりすることなく歯科技工に関わり続けることができ、キャリアアップもしやすくなります。また、女性に限らず男性でも、子どもが小さいうちは家族とのコミュニケーションのため早めに帰宅して、子どもが寝てから自宅で仕事を再開するようなフレックスタイム制も可能になるのではないでしょうか。より一層働きやすい職場づくりなど、デジタル化がもたらす可能性は多様です。
「ものづくり」の楽しさを伝えたい
休みの日には、ボーイスカウトのリーダーとして活動をしていることがほとんどです。小学校3~5年生の子どもたちを連れて野外活動の指導をしています。今の子どもたちは、普段の生活の中でナイフを使ってで木を削ったり、自分たちで工夫して何かを作ったりする機会はあまりありません。子どもたちが自分たちの手で何かものを作る。そういうことが楽しいと思ってもらえればいいなと願っています。歯科技工の原点である「ものづくり」が楽しいと感じてもらえれば、その子どもたちの中から将来の歯科技工士が出てくるかもしれませんね。
PRODUCT 歯科技工物紹介
IMPLANT WORK
PROFILE プロフィール
生産本部
山木 康充(ヤマキ ヤスミツ)- 1969年
- 大阪府出身
- 1991年
- 大阪大学歯学部附属歯科技工士専門学校 卒業
- 1991年
- 和田精密歯研株式会社 入社
- 2012年
- スーパーテクニシャン 認定
資格
- 2009年
- 日本口腔インプラント学会 インプラント専門技工士 認定
所属学会
- 日本口腔インプラント学会
主な論文発表
- 2022年 1月
- 『鋳造と切削加工で作製したチタンクランの適合精度について』 日本歯科産業学会誌
主な学会発表
- 2000年 9月
- 『当社における受注インプラントの分布と推移』(ポスター発表) 日本口腔インプラント学会
- 2008年11月
- 『インプラント上部構造のデザインが清掃性に与える影響』 日本口腔インプラント学会
- 2011年 2月
- 『コンピュータガイデッドサージェリー及びCAD/CAMを用いて上部構造を製作した一症例』 日本口腔インプラント学会
- 2018年 8月
- 『歯科におけるデジタルのはたす役割〜歯科技工所における最新のワークフローはインプラント治療にどのような影響を与えるのか〜』 2018中国国際口腔設備機材博覧会CDS 第20次全国口腔医学学術大会
- 2019年11月
- 『インプラント技工におけるスクリューのトルクコントロールが高さに与える影響の調査』 日本口腔インプラント学会 第39回近畿・北陸支部学術大会
- 2020年 2月
- 『アナログ的技術を併用した自たるインプラントブリッジの位置精度の向上』(シンポジウム発表) 日本口腔インプラント学会 第39回関東・甲信越支部学術大会
- 2020年 9月
- 『アナログ的技術を併用したデジタルインプラントブリッジの位置精度向上の工夫』(ポスター発表) 日本口腔インプラント学会 第50回口腔インプラント学会記念学術大会