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スーパーテクニシャン(歯科技工士紹介)

多田 郁

多田 郁 Kaoru Tada

『もうちょっと』の数値化

テスト勉強そっちのけでプラモデル

 子どものころから彫刻やプラモデル作りが好きで、テスト勉強もせずに徹夜でプラモデルを作っていました。将来は室内装飾関係のデザイナーになりたいと思っていましたが、人一倍の勉強とデザインセンスが勝負の世界。

 自身のセンスの無さや根っからの勉強嫌いのため、その道を諦めかけていたときに担任の先生(久保善彦先生)から「大阪に入れ歯を作る会社がある」と言われて、大嫌いな勉強をしなくても「自分の大好きな『ものづくり』の才能が生かせる!」と当社への就職を決めました。

「自分が働きたいのはこんなところじゃない!!」

 大阪本社のギコービル8階での入社式の後、歯科技工業の各部門を初めて見学したとき直感的に3階(当時の金属床部門)は、まさか自分が配属されると思わず「ここはちょっと・・・ムリ」と正直思いましたね(笑) なんとなく薄暗く、埃っぽくて「キーン」という金属を削る音が鳴り響く、技工所というよりは鉄工所のようなイメージ。

 一通りの見学の後に、いよいよ配属先が決定する辞令交付です、辞令を渡されたときには目を疑いました。当時は今以上にセラミストが歯科技工士の花形といわれる時代。「自分が働きたいのはこんなところじゃない!」「荷物をまとめて田舎へ帰ろうか・・・」と葛藤したことを覚えています。何とかとどまろうと思ったのは、学生時代お世話になったプラモデル店の店長が大阪へ出て行く私に言った「都落ちだけはするな」という言葉が耳に残っていたからです。

「もうちょっと」を数値化

「もうちょっと」を数値化

 技工の世界で多く耳にするのが「もうちょっと」「あと少し」などの曖昧な表現です。技工は数㎜や数μ単位で患者さんの口腔内に合わせる世界でありながら、現実は経験を積んだ熟練者でなければ習得できない職人技の領域で成り立っています。その結果、製作現場でも人によってバラバラの寸法である「もうちょっと」「あと少し」の指示しかできないために人材育成が困難を極めているように思われます。感覚は人によって異なります。

 その「ちょっと」を㎜などの誰もが共通の基準で歯科技工のレシピを明確化(デジタル化)したのがユニデント社長の川島哲氏ではないでしょうか。私自身も川島氏と出会い、教えていただいたことで、従来の曖昧な表現ではなく明確に伝え教えることの必要性を感じ、今でも全国の事業所での研修や実技指導をするときには心がけるようにしています。

 当社のように全国展開している技工所ではお客様に安心していただくためにも「どこで誰が製作しても同じ製品」である必要性を痛感しています。
それこそが「技術力」つまり「当社の強み」になっていくのではないでしょうか。

『有言実行』夢、目標を口に出すことが大事

 入社して37年経ちますが、「大阪に出て行くときに言ったことをちゃんと実現しているね」と叔母に言われました。
 
 当時は高卒の世間知らずの18歳で、取り柄と言えば若いだけで未だ見ぬ将来を夢見て「家を建てる」とか「良い車に乗る」などと少し大げさに宣言(吹聴)していましたが、今思えば、周りに宣言していたからこそ、くじけそうになったら励まし、怠けていたら叱ってくれる人がいたのだと思います。そのおかげで、諦めずに実現できたと感じています。

 私のような意志の弱い人間には「不言実行」は無理です(笑)。不言実行の場合、結果が本当にその人の目指した形かどうか、実際のところはわかりません。また、挫折しても自分自身に甘えて投げ出すこともできます。

 若いみなさんには、もっともっと「有言実行」の精神で夢や目標を口に出してほしいです。そうすれば必ず周りの人に助けてもらいながらも、夢や願いは実現できます。きっと。

PRODUCT 歯科技工物紹介

REMOVABLE WORK

REMOVABLE WORK

PROFILE プロフィール

多田 郁

生産本部

多田 郁(タダ カオル)

1957年
香川県出身
1976年
和田精密歯研株式会社 入社
1980年
新大阪歯科技工士学院 卒業
1997年
CPセンター綾上 所長
1997年
スーパーテクニシャン 認定

主な論文発表

2004年12月
『5000床の使用済義歯に学ぶ』 日本歯科技工学会雑誌
1995年 4月
『レーザー溶接の強度に関する研究』 日本顎咬合学会誌
1989年 8月
『技工所からみた金属床義歯の製作頻度』 日本補綴歯科學會雜誌
2010年10月
『ポリカーボネート系樹脂製ノンクラスプデンチャーの現在』 日本歯科評論
1987年 8月
『多孔質金属メッシュプレートの口腔乾燥症への応用』 日本歯科技工学会雑誌
1988年10月
『多孔質金属メッシュプレートの口腔乾燥症への応用(第2報)』 日本歯科技工学会雑誌
1988年12月
『多孔質金属メッシュプレート義歯の臨床意義とその製作法』 医歯薬出版 歯科技工
1990年 5月
『超精密コバルトクロームワンピース鋳造床のシステム化』 医歯薬出版 歯科技工
1990年 7月
『オリジナルのインベストメント・フォームの使用による各種効果について』 クインテッセンス出版 QDT
1990年
『ラボサイドが希望する模型のあり方(他)』 クインテッセンス出版 QDT別冊
1992年 5月
『超精密コバルトクロームワンピース鋳造床』 医歯薬出版 歯科技工
1993年 8月
『チタンの特性を生かした鋳造床』 医歯薬出版 歯科技工
2005年 2月
『自家製正中線・基準線印記装置による口腔内基準線の設定』 医歯薬出版 歯科技工
2009年 4月~2010年 1月
『患者と時代のニーズに応える金属床義歯の技工・臨床』 医歯薬出版 歯科技工

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