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【日本歯科新聞】さじかげん (171)「給料と自由」

 「世の中で一番いい仕事は何か」と問われて、ある方は「タクシー運転手かも」と答えた。そう言われると確かにタクシー運転手はいったん会社を出れば、自分の意志で自由に行動でき、うらやましい。チームプレーである会社や団体は、得てしてトップダウンで上からの命令やあるいはノルマを課せられる。そのためにマニュアルをマスターし、その通りに行動する訓練がなされ、自由度は少ない。

 歯科技工業もその一つで、学校でマニュアル的教科書を使って学んだ手法はなかなか変えられない。そのため、社会に出て実務についても、一度受けた教育から路線変更するのはよほど柔軟な体質でない限り至難の業となる。この業界をよくしたいなら、まず教育改革を行い、国家試験の内容を見直して明日の臨床に変幻自在に対応できるようにしていかなければならない。

 タクシー運転手の話でいえば、タクシー内の会話から得る情報は貴重で、その土地・区域ではタクシー運転手に勝る第一線の情報源はないと言っても過言ではない。新聞やテレビは作られている、〝ヤラセ〟の一面が見え隠れするが、ベテランになれば方言まで生で、生きた情報が聞け、聞く耳を持っていれば実に大きな情報源となる。タクシー代が3千円とすれば、10倍の3万円、100倍の30万円もの価値を持った情報が収集できる。自社の社用車や個人所有の車ばかりを利用して経済効果を考えるのもいいが、時々はタクシーに乗って学ぶのが良いと考える。

 ところで、給料を選ぶか、自由を選ぶかという選択をする時、会社や病院のようにチームプレーをする所では規律が必要であり、さらに義理人情を心得なければならないが、トップが部下に自由を与える工夫をすれば、前進の道のりは短くなる。もっと分かりやすく言えば、給料もさることながら、自由もそれを上回るほど大事で、成長・増収の近道かもしれないということだ。

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