鰐淵 正機
(和田精密歯研監査役)
さまざまな話題を振りまいて北京オリンピックが閉幕した。心に残る競技にノルディック複合団体の日本の活躍があった。28年ぶりの表彰台や銅メダルよりも、中継の解説者と表彰台の選手のコメントがまったく同じ、「今日のMVPはワックスマン」。チームの裏方への感謝を口にしたことに感動を覚えた。長年苦労をともにした仲間であることが伝わってくる。
裏方の仕事を無理に歯科技工にこじつけるつもりはないが、学生時代にノルディックスキーを経験しただけに気持ちが理解できた。スキーワックスは当日の雪質に合った一番滑るものを全体に塗って、ちょうど足の裏にあたる部分だけはグリップが効くように滑らないワックスを塗ると指導された。ワックスの選択を誤ると斜面に立ってもびくとも動かない。それに平らなコースを滑るにしても細い板だから簡単にバランスを崩して転倒する。必死に走ると汗と鼻水が一緒になる。大変だが、頭と身体を使う楽しい競技だ。
スポーツも新しい技術やルール変更で進化するように、近年の歯科技工はデジタル化が普及し、口腔内スキャンされたデータが直接技工所に届き、補綴物を製作するようにもなっている。ただし、新しい技術には新しいノウハウが必要になる。
組織ラボの場合、データが直接、技工所に届くというのは従来の外交担当者を飛び越えることになる。外交は単なる納受注の行き来だけではなく、先生の考えやスタッフの方や患者さんの情報、あるいは技工士からの要望を伝える重要な役割がある。
デジタル転換期の今こそ、歯科補綴はそれぞれの役割を十分に認識してチーム力を高めなければせっかくのシステムが機能しない。臨床ではマニュアル通りにいかないこともある。スキーは滑らないといけないが、仕事で滑るわけにはいかないのだ。
(W/W)