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【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】「桑田先生からのギフト」

鰐淵 正機
(和田精密歯研監査役)

 ニコニコと両手を包んで握手をしてくださる元気なお姿がいつもすぐそこにあった。桑田正博先生の突然の訃報は、にわかには信じがたいことだった。

 当社は随分前から桑田先生の技術指導を受けていて、先生を最寄りの空港や駅へ送迎するのは地区の責任者や部門長の役割だった。そのため、移動や食事の時に二人きりの時間を過ごすことも、ままあった。

 私の場合、初めてご一緒させていただいた時に、補綴技工でご縁のあった歯科医院が偶然同じだったことで先生との距離が縮まった。

 所属している学会のH先生から技工を依頼されたのだが、桑田先生はかつてそのH先生のお父様とスタディグループでご一緒していたという。「H院長は当時から口腔は健康の窓とおっしゃっていたよ」と教えてくださった。「人は生涯のうち逢うべき人には必ず逢う。しかも一瞬早かりもせず、遅かりもせず」。その時が来たのだと実感した。

 ある年の技術指導の折に桑田先生に教えを請うたことがあった。「咬合や咀嚼を勉強する上で、上下の歯の一つずつの咬頭の内斜面、外斜面の形態がとても重要で、このことを勉強する私的な会を発足したいのですが、咬頭斜角のことを別の言葉で何と言えばよろしいでしょうか」とお尋ねすると、先生はしばし考えられて、「インクラインはどうだろう」とおっしゃった。広くは斜面・勾配を意味する英単語であるが、趣意を汲み込んだそれはとても素敵なギフトだった。さっそく勉強会の名称を「インクライン」とした。

 桑田先生が常におっしゃる「なぜの追求」。またお会いできたなら先生は「なぜの追求に今日、君は何をした?」と微笑みかけてくださるだろう。歯科技工士を志したわれわれの心にずっと生きる偉大なる先生。心よりご冥福をお祈りいたします。

(W/W)

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