高過ぎないということがポイントです。
ではそのラインは?ということですが、私はニュースペースディバイダー(和田精密歯研から発売)という咬合高径を決めるスケールを作りました。
このスケールの考え方は、身長と咬合高径には相関関係があるということです。Ⓐ22:16、Ⓑ20:14.5、Ⓒ18:13.1とスリーサイズを示しました。
背の高い170㎝台の方は、Ⓐ上顎が22㎜下顎が16㎜の設定をすることによって、咀嚼時に患者さんが受け入れやすく、審美的にも満足が得られると思われます。160㎝台の方はⒷ、150㎝台の方はⒸを採用します。
最初に書きましたが、高過ぎるのはやはり受け入れられないことが多いので、この目安を臨床で活かすことが成功へのキーポイントと考えます。
宣伝になってしまいますが、ニュースペースディバイダーは、開発した私が予想していたよりはるかに売れています。それなりにメリットを認めていただいている結果だと思います。
咬合高径を決めるのは難しいが、大切であるとお考えの先生が多いからでしょう。
ただ、咬合高径というのは、この高さでなければ成功しないというものではなく、かなりの幅があり、ある高さより10㎜高くても低くてもどちらも患者さんから「だめ」とは言われないこともあります。10mmというのは極端ですが、私の感覚では5㎜位の自由度はあると思います。
しかし、高過ぎてはうまくいかないということを常に心しておく必要はあります。言葉は不適切かも知れませんが、低く逃げるというのがプロサイドです。
このスペースディバイダーの使い方について、少し細かく説明すると、まず測定位置は上顎の場合、正中から遠心部5㎜のところを起点として、下顎は齦頰移行部とします。
デリケートにどこを測定点に設定するのか難しいのですが、下顎の場合は、一般的に開口時に義歯が浮き上がらない床縁の大きさとお考えください。
下顎の場合は、歯槽頂付近までという考えもありますが、それは例外として、一般的には義歯床縁部と考えて良いと思います。
この22:16の上下按分法は自画自賛になりますが、なかなかです。22:16という数値を見られると、22:18ではないかという疑問を投げかけられる方がありますが、上顎義歯と下顎義歯を単体で見れば22:18で良いのですが、それをなぜ16にしたのかというと、上下の被蓋量を2㎜と考えると、咬合高径としては16になるということからそうしました。
18㎜にしてしまうと、やはり2㎜高くなってしまいます。臨床的には高過ぎると私は考えます。
Ⓑ20:14.5、Ⓒ18:13.1は22:16の按分値です。小数点以下の数値は、比率から出たものですので、あまりデリケートに気にすることはありません。
蛇足的ですが、鼻の下が長い人はどうするかと言われれば、下顎分を上顎に差し上げます。つまり24:14もあるということです。口腔外に取り出すととてもバランスが良くないのですが、そういった応用はあり得ます。
咬合高径でこれだという数値を示すのは無理がありますが、一応の目安と考えてください。多くの先生がお持ちの高さに対するデリケートなニーズに応えていると思います。
いずれにしても高過ぎるということが予後を悪くすることは事実なので、高過ぎない義歯作りのためのツールとして活用いただければと思います。
咬合高径が高くないか?という問いかけは常にするべきです。