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【日本歯科新聞】さじかげん (164)「クラウンセンター20周年」

 仕事には、やりがいやプライドという面と、お金の流れという二面性がある。医療にお金の話は不似合という意見もあるだろうが、それがなければ成り立たない。ここでいうお金の流れとは「適切な歯科医療(技術や能力)の正しい評価」のことである。

 世界の七不思議といわれた金パラクラウンの製造をシステム化し、不採算部門の問題に挑戦するべく、1995年に「クラウンセンター綾上」を6億円の建設費と2億円の重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金をもとに稼働させた。

 当時は審美歯科が重要視され始め、付加価値の高い熟練の歯科技工士の需要が高まりつつあった。だが歯科技工士の大半が、12時間近い労働時間の多くを保険技工に費やすことを余儀なくされていた。本来、技工士の適正な一日の生産能力は5本というのが持論だが、その数以上の仕事量をこなすには長時間労働でつじつまを合わせるしかない。必要な歯科技工士数は不足のままだった。

 過去にも保険制度の改善を訴えるために金パラクラウンの不採算を例に挙げ、歯科業界全体の負担を提示した。FMCに関して技工業界全体は1年間に約554億という膨大な金額を無償奉仕したことになると試算したが、世に訴えるには非力であった。

 クラウンセンターの20年間は試行錯誤の連続だった。近年はCAD/CAMの普及により技工の仕事のありさまが変わりつつある。そうした中、投資力のある技工所ならばよいが、そうでなければ状況は20年前とさして変わらないだろう。

 歯科医療は尊い仕事である。だが求められる能力や質が高い割に、時給に換算すると安いとお感じになる歯科医師もいるのではないだろうか。それは歯科衛生士も歯科技工士も同様で、時間と費用の無視は歯科界最大の問題と言える。最近、同じ意見を持つ歯科医師の方々がいるのが心強い。(W/W)

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