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【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】 「患者の声を聞く環境を構築」

山口 敦
(和田精密歯研常務取締役)

 盆栽は大木を小さな鉢の中に凝縮することで自然を表現している。この凝縮するという面をとらえて、ある歯科技工士の熟練者から「歯科技工で使う技術は産業界を盆栽のようにしたものだから、困ったことが起きたら産業界に聞け」と言われたことがある。

 歯科技工で何か困った問題が起きた時、器材メーカーに問い合わせるとそれなりに解決はする。しかし、独創的技術で他社にない製品を作ろうとした場合、物事の根本を知り、応用するためには広く産業界に学ぶ必要がある。

 産業界には、金属加工業もあれば樹脂成型業、プレス加工業、研磨業などさまざまな領域があり、それが専門細分化され、進化、発展している。

 歯科技工は完成品が人工臓器として人体で使われるため、産業界のあらゆる加工技術のエッセンスを組み合わせて構築されている。故川原春幸先生は歯科技工士を評して、「世の中を構成する火・水・木(樹脂)、金(金属)、土(セラミック・ジルコニア)、日(光)などを操り、無から一本の歯を作る錬金術師のようにも思える」と言われたことがある。

 物質を正しく操るには論文や書籍を読み、それを整理し、組織の中で情報を共有するために書き出す必要がある。また、数字を使って原価計算や管理指標・売上目標を設定し、品質管理にも役立てて分かりやすくする。ゆえに熟練者は「歯科技工士には『読み・書き・算盤』が大切になる」という。

 さらに、患者さんの声にも耳を傾けないと真の咬み合わせは分からないと思っている。そのためには患者さん不在のラボサイドであっても、ITなどを駆使し、患者さんの声を聞くための環境を構築する必要性を感じている。
(Y/W)

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