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【日本歯科新聞】さじかげん【番外編】「入れ歯救急」

鰐淵 正機
(和田精密歯研監査役)

 口の中でジャリと嫌な音がした。恐る恐る鏡で覗くと歯が欠けている。経験された方もいるだろうが、停電や断水と同じように普段当たり前にはあるものが予告もなく突然、壊れたり途切れたりした時のショックは大きい。そしていきなり不便になる。

 過去に怪我で中切歯の半分を折ってしまった現場に遭遇したことがあるが、思い出しただけで寒気がする。こんな時はどうすればよいのだろう。緊急歯科医療という分野はあるのだろうか。

 歯科医師と歯科技工士は補綴では一緒に仕事をするが、休日夜間の緊急救急医療では直接関係がない。歯科技工の緊急は作業の行程で失敗したリカバリーの内部緊急だ。しかし緊急性を要する治療はいくらでもあるだろうし、患者さんにとってはどんな症状でも緊急性は高いはずだ。

 以前、義歯の大家といわれる先生が講演で「義歯の治療は患者が悩む症状をその場で治すことができる」と話されていた。なるほど医科は一瞬で症状を消し去ることは不可能だ。患者さん曰く「噛むと痛い」「舌が痛い」「噛めない」「噛みきれない」「頬を噛む」「食べ物が逃げる」「顎が動かない」。これらはまさに“入れ歯救急”が必要な状態だ。

 さて歯科技工士ならどこをどう直すか。緊急に対応するには、いわば現場力を持つ歯科技工士でなければならず、これには相応の経験値が不可欠だ。しかし、分業制のラボではチェアーサイドで必要なトータルスキルの会得に時間がかかる。さらに現在は、歯科技工所同士が提携して製品を外注し合う製造業的側面も強い。

 緊急であろうがなかろうが、補綴においてクリニックとラボの日ごろの連携はとても大事で、長い経験を積んだパートナーともなれば互いのニュアンスを理解しているから救急対応もおそらく呼吸が合うだろう。生きた経験が必要なのだ。

(W/W)

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