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【日本歯科新聞】さじかげん (139)「春の誓い」

 「尊敬する人はオードリー・ヘプバーンです」

 英語を専攻する女子大学生と話す機会があった。映画でのオードリーのセリフは共演者に合わせて微妙にイントネーションを変えているから面白いと専門的な意見を聞かせてくれた。そして、将来は英語力を生かしてホテルの仕事に就きたいと目を輝かせた。

 以前、社内にオードリーの大きなポスターを飾ったことがある。意外にも20代の若い社員たちからの反響が大きく、とてもうれしかった。歯科技工業界は大変忙しい。せめて一瞬でも心がホッとする空間を作りたいと考え、ポスターを飾った。特にうれしく感じたのは、ポスターに足を止め、人間だけが持ち得る「美しい」と感じられる心とそう感じ取れる心のゆとりを社員たちが持っていることだった。この感性をはぐくむことが企業にも重要となる。

 若い世代が脂が乗ってきてバリバリと仕事をこなすころ、深刻さが増す超高齢社会の日本はどう変化しているのだろう。

 「介護予防」という言葉がある。今以上に介護の負担が大きくならないように支援することらしい。しかしすでに介護業界は人手不足に陥っている。おそらく将来は家族による介護の負担が増え、たとえ働き盛りの世代でも男女を問わず介護に時間を割かれる状況になるだろう。そうなった時、精神的な焦りが生じ、何かを美しいと感じられる心の余裕をなくしてしまわないだろうか。

 企業も社会の中にある組織という立場から、世の中の変化を敏感に感じ取っていく必要がある。だからこそ、感性を磨く教育が必要となるのだ。追われるような生き方ではなく、心に余裕を持った暮らしの中に自己を確立するために。

 冒頭で紹介した学生のように自らを高め、目標に向けて励む中で、希望がかなえられる社会や企業、歯科業界でありたいと考えるとともに、品格と誇りを持って頑張ろうと決意を新たにした。(W/W)

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