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【日本歯科新聞】さじかげん (166)「遊行にそよぐ風」

 暮らしが豊かになり平均寿命が延びた日本は、超高齢社会というかつて経験したことのない時代を迎えている。シニア層、シルバー世代と呼び方にまで配慮がなされる社会ではあるが、健康長寿は誰もの願いだろう。

 今年の夏は古くからお付き合いのある方々に久しくお会いする機会に恵まれた。80歳、90歳を超える年齢にもかかわらず皆さんご健勝で、今なお歯科医学の発展と研究にまい進する姿には心から敬服するものがある。

 よく健康寿命と言われるが、なぜ彼らが矍鑠としていらっしゃるのかを考えてみると、昔も今もご自分を変えていないことに気が付く。ここが大事だ。要するに成功する人は自分を変えずに社会や環境の変化に対応していると言えるのだろう。これは社会から信頼される秘訣でもある。自分を変えてまでいい格好をしないのだ。

 古代インドの思想に人の一生を、学生・家住・林住・遊行の四つに分ける四住期という考え方がある。75歳以上の遊行期は、いらないものはそぎ落とし、何ものにもとらわれることなく自由自在に生きるとでも言えばよいか。

 この年になると世の中に無関心ではないが、距離を置いて世間ごとにのめり込まない客観的な考えができる。例えば種をみれば花が分かるというように若いうちは原因から結果を見た。今は逆に、花を見ると種ばかりでなく生育環境などもおおよその見当がつく。結果から原因の良し悪しが分かるようになるのだ。

 前進するばかりの若い世代ではなく、退一歩からの視点を持つ年相応の静と動を併せ持つ生き方だ。おそらくこの夏に再会した古い友人も皆、同じように生きているのだと思う。遊行にそよぐ風に変わらぬ自己がしなやかに生きる。幹は太くて、びくともしないが、枝や葉は吹く風にそよがせる人生の達人たちである。

(W/W)

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